障害年金の超えるべきハードル

障害年金を受けるには、傷病の程度だけでなく、20歳になってから初診日がある場合は、初診日前に保険料の納付状況を満たす必要があります。
初診日の前日時点での過去の納付状況が審査されます。未納・未加入期間があるときは、初診の後にさかのぼって納付するいわば「後出しジャンケン」は認められません。

何らかの病気を疑いながらも受診していなかった引きこもりの方の場合、初めての受診前に、年金事務所か市区町村役場で保険料の納付状況を確認し、必要な手続きをされてから受診されることをお勧めします。

納付できないときは免除、猶予もできます

また、書類審査だけで支給・不支給が決まります。医療機関(以下「病院など」)の証明が力を持ちますが、診療録(カルテ)の保存期間は、法律で最後に受診してから5年間とされているため、請求を考えたときにはカルテが入手できないことも。
さらに、さまざまな誤解により主治医の先生から「診断書は書けない」と断られてしまうこともあります。

障害年金の請求でさまざまなハードルが現れる原因は、保険料納付以外は、本人だけで完結するものでないところにあります。

主なハードルと解決方法

初診日前の保険料の納付状況

20歳以降は年金制度に加入し、保険料を納付することとなります。
20歳以降に初診日がある場合、保険料の納付状況が審査されます。
「直近1年要件」または「2/3要件」のどちらかを満たせば、審査をクリアします

なお、20歳前の厚生年金加入中に初診日がある場合も、納付要件が審査されます。

直近1年要件

初診日の前日において、初診日がある月の2カ月前までの1年間が、すべて次のいずれかの期間であることが必要です。つまり、未納期間でないことです。

  • 納付済期間(厚生年金の加入期間、共済組合の加入期間を含む)
  • 免除期間
  • 猶予期間(学生納付特例期間を含む)

初診日が令和8年3月末日までにあるときは、次のすべての条件に該当すれば納付要件を満たすものとされています。

  • 初診日において65歳未満であること
  • 初診日の前日において、初診日がある月の2ヵ月前での直近1年間に保険料の未納期間がないこと
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初診日がある月の2ヵ月前までの直近1年間(令和2年8月から令和3年7月まで)に保険料の未納期間がないので納付要件は満たしています。

※初診日が平成3年5月1日前の場合は、納付要件が異なります。

2/3要件

初診日の前日において、初診日がある月の2カ月前までの年金加入すべき期間の3分の2以上が、次のいずれかの期間であることが必要です。つまり、未納期間があっても3分の1以下であることです。

  • 納付済期間(厚生年金の加入期間、共済組合の加入期間を含む)
  • 免除期間
  • 猶予期間(学生納付特例期間を含む)
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被保険者期間は、20歳から初診日がある月の2ヵ月前(令和3年7月)までの15ヵ月です。

このうち、保険料納付済期間および保険料免除期間は12ヵ月です。

上記の例では、保険料納付済期間および保険料免除期間が3分の2以上(10ヵ月以上)あるので納付要件は満たしています。

出典:年金機構「障害年金ガイド」を一部加工

主なハードルと解決方法

保険料の納付要件を満たせないとき

原因

初診日前の期間に未納・未加入があった

解決方法

考えていた初診日が正しいか確認する

  • 20歳前に初診日があれば、保険料納付は問われない
  • 初診の後、治療の必要なく受診していなかった期間が5年~10年程度あるなど、再受診の日が初診日(「社会的治癒」後の初診日)になり、そこで納付要件を満たすことも

確認しよう

20歳前に初診日はないか

保険料の納付要件が問われない20歳前に初診日がないか、ご家族などに聞いてみましょう

確認しよう

治療の必要のなかった期間後が初診にならないか

医学的には完治ではないけれど、治療の必要なく通常の社会生活を送ることができる状態を「社会的治癒」といいます。社会的治癒の後、治療を再開した日を初診日として請求できる場合があります。この方法で初診日が認められるためには、次の状態であることが必要です。

  1. 症状が固定し、治療する必要がなくなったこと
  2. 長期にわたり、自覚的にも他覚的にも病変や異常が認められないこと
  3. 一定期間、普通の生活や就労をしていること

原則的な考えは、「薬事下(薬の治療が必要な状態)または療養所内にいるときは社会的治癒とは認められない」(厚生労働省)というものです。しかし、服薬を続けていてもその内容が維持的、経過観察的なものであれば、社会的治癒が認められることがあります。

 

再受診までどのくらい期間が空いていれば社会的治癒になるのかは、病気によって違いがあります。精神疾患(うつ病、統合失調症など)の場合、再発までおおむね5年程度、その他病気によっては10年程度の期間が必要、とされることもあるようです。

なお、治療のためのお金がないから病院へ行かなかった、といった自己判断で治療をやめた期間は社会的治癒の期間になりません。

初診日の証明(受診状況等証明書)が取れない

原因

病院などの廃業、カルテ保存期間の超過

解決方法

初診日がわかる次を添付する

  • 2番目以降の病院などの紹介状
  • 2番目以降に受診した5年以上前のカルテ、本人の話をもとに受診日、初診病院など名称が載っている部分
  • 第三者証明
  • その他証明できる書類(障害者手帳、障害者手帳申請時の診断書、生命保険など請求時の書類、健康診断の記録、母子手帳、健康保険の給付記録、お薬手帳、診察券、交通事故証明など)

確認しよう

受診状況等証明書など

初診日のある病院などで『受診状況等証明書』を入手することが何より大切です。

カルテ保存期間が過ぎているなどで作成してもらえないときは、初診日を証明するため考えられうる書類を添付します。ケースにより、複数の書類が必要になることがあります。

年金機構ホームページから様式をダウンロードできます。

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(1)以外は「受診状況等証明書」が入手できなかった病院等ごと、『受診状況等証明書が添付できない申立書』の提出も必要

※「第三者証明」は20歳前の障害基礎年金以外、客観的な「参考資料」の添付も必要。

[ 初診日の証明として1枚で足りるもの ]

証明書の種類 説明
1番目の病院の「受診状況等証明書」  原則のもの
2番目以降の病院の「受診状況等証明書」 1番目の病院の紹介状が添付されているもの
2番目以降の病院の「受診状況等証明書」

5年以上前に書かれたカルテを基に作成

カルテには、本人が当時話した1番目の病院名と初診日が記録されている

当時の状況を直接知っている医療従事者による「第三者証明」 1番目の病院の医師や看護師などによって記入されたもの
20歳前に初診日があるとき(20歳前に厚生年金の加入なし)の「受診状況等証明書」 20歳前に初診日があることを医師が証明すれば、日付は特定できなくてよい

[ 第三者証明とは ]

民法上の三親等以内の親族は含まない第三者に、受診状況をできるだけ具体的に証明してもらいます。
第三者になるのは、民生委員、病院長、会社の人、近所の人、友人、いとこなど。
原則2枚以上(2人以上)必要です。年金機構ホームページに様式などがあります。

第三者証明には、次の3パターンがあります。

  1. 直接的に見て認識していた(例:お見舞いに行った)
  2. 本人や本人の家族から初診日ごろに聞いていた 
  3. 本人や本人の家族などから、請求時からおおむね5年以上前に聞いていた
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主治医の先生が診断書を書いてくれない

原因その1

重い病状を理解してもらえていない(精神疾患など)

解決方法

普段の診察から、病気による支障を伝え続ける

原因その2

先生が障害年金のことをよく知らず、受給できる程度でないと誤解している

解決方法

日本年金機構のホームページにある「認定基準」を先生に見せ理解してもらう

障害年金の診断書の作成を依頼するときになって、先生とコミュニケーションがうまく取れていなかったことに気づき慌てるケースがあります。

普段からコミュニケーションが取れる先生でないと、障害年金の支給決定を得ること自体が難しいかもしれません。なぜなら、障害年金の診断書はお医者さんが患者さんの日常を把握していることが前提となっており、診断書の内容で支給が決まるものだからです。

 

障害年金の診断書は、一般的なものとは異なり、日常生活・就労の場面でその病気やケガがどのような不自由さをもたらしているのか、を表すことが求められています。つまり、お医者さんが、日常生活に踏み込んで理解しようという気持ちを持っていないと、障害年金を受けるための適切な診断書が出来上がらないのです。

 

相性の問題もありますが、理解しようと努めてくれ、コミュニケーションが取りやすい先生に診てもらいましょう。

医師法と診断書

医師法第19条2項では、「診察若しくは検案をし(中略)た医師は、診断書(中略)の交付の求があった場合には、正当の事由がなければ、これを拒んではならない」としています

医師が診断書の作成を拒むことができる正当な事由とは次のような場合です。

  • 診断書が詐欺、脅迫等不正目的で使用される疑いが客観的状況から濃厚であると認められる場合
  • 医師の所見と異なる内容等虚偽の内容の記載を求められた場合
  • 患者や第三者などに病名や症状を知られると診察上重大な支障が生ずるおそれが強い場合など、特別な理由が存する場合

(東京簡易裁判所 判決文 平成15年(ハ)第12983号 慰謝料等請求事件より加工)